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インタビュー

いかに人を育て、業界に貢献するか。建設業界の新時代を切り拓く。

株式会社竹延前社長/株式会社KMユナイテッド社長 竹延幸雄

  • 更新日:2022/11/16
  • 投稿日:2022/11/16

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株式会社竹延は、創業から70年以上、大阪府を中心に建築塗装やリフォームを手掛ける企業です。今回ご登場いただく代表取締役社長の竹延 幸雄さんは、実は娘養として竹延に入社。それまでは大手鉄鋼メーカーや広告代理店に勤務していましたが、奥様の家業が存続の危機に陥っていることを知り、義父である前社長に事業継承を申し出たそうです。 竹延さんは、広島県の農家のご出身。祖父は、畳の原料となるい草の生産者でした。お母様の実家が畳の生産業を営んでいたことが縁でお父様と知り合い、結婚に至りますが、お父様は家業を継がず、会社員になる道を選びます。しかし、竹延さんが中学生の頃にお父様が病気で他界。家計を支えるため、お祖父様は再び、い草を織る機械を動かし始めることになります。汗水たらしながら、プライドをもって自身の仕事に取り組む家族の姿を見ていたからか、職人に対する尊敬の念をずっと抱き続けていた竹延さん。会社員を続けることに何の不満もありませんでしたが、職人気質の義父が事業に苦労しているという話を聞き、気づくと「継ぐ」という選択肢を選んでいました。しかし、いざ事業継承してみると、お金の問題、人手の問題、技術継承の問題と、乗り越えなければならない壁がそびえ立っていました。いったいどのようにして、その壁を乗り越えてきたのでしょうか。これまでの「業界の常識」を覆していったことが、突破口となったようです。

この記事でわかること
  1. 事業継承後、会社の利益が出ない理由がわからなかった。そもそも台帳が存在しなかった
  2. 「人手不足」と「技能継承」の課題を解決するため、人材育成に特化した子会社を立ち上げた
  3. 夢をもってこの業界に入ってくる人々のために、仕事に集中できる環境を作ることが自分の使命

事業継承後、会社の利益が出ない理由がわからなかった。そもそも台帳が存在しなかった

――竹延さんはもともと大手企業に勤めていて、竹延を継ぐことは考えていなかったそうですね。当時の社長であったお義父様も、誰かに会社を渡すことを考えていなかったとか。

私が「継ぎたい」と言った時、義父は嬉しさ半分、複雑な気持ち半分といった反応でしたね。当時は会社の経営がうまくいっておらず、人手も集まらなかったので、廃業することも検討していたようです。ちょうど私と妻が結婚したばかりで、義父からすると娘のことが心配だったのもあると思います。私も妻も会社員で、そちらにいた方が安定だったので。

――竹延さんが事業を継いだ際、会社は大きな負債も抱えていたそうですね。

売上15億円に対し、負債が1億円ほどありました。経営には親族も携わっていましたが上手くいかず、義父が孤軍奮闘し、運営している感じでしたね。

――そのような状況のなか、どうやって会社を立て直されたのですか。

入社したての頃は、この会社で利益が出ない理由がわかりませんでした。それもそのはずで、当時は台帳がなかったんです。私たちの場合、「原価=人件費+材料費」ですが、人件費の単価表も材料の単価表も会社に存在しなかった。各々の感覚で価格を決めて見積書を作り、それを社長に報告するというやり方をしていたんです。

単価表がないのに、どうやって見積書を作っていたのかと尋ねると「これまでの勘や、人間関係で決めていた」と返ってきて、びっくりしました(笑)。そこでまず、収益と原価を「見える化」するシステムが必要だと思い、2ヶ月間かけて入力フォーマットを作成しました。そのフォーマットは、20年経った今でも使っています。

――とても初歩的なところからはじめたのですね。

そうですね。だけどこのやり方が、多かれ少なかれ、中小企業のとくに建設業界では当たり前のやり方なんだろうなとも思います。今は単価表を基準にして見積書を作っていますし、とくに人件費の単価については、ベテランであっても働きぶりに合わせて柔軟に調整しています。

――ほかに取り組んだことはありますか。

作業クオリティと作業効率を上げるために、業務内容の改善を行いました。この業界は、ひとりの職人さんが段取りから片付けまで全部一人でやるんです。だけど、それぞれの工程をその工程に特化した人がやる方が、速いし質も上がりますよね。

養生をする人はずっと養生をして、塗る人はひたすら塗る。外注も視野に入れながら、役割分担する仕組みを作りました。かつて企業の人事部で働いていたことがあって、そこで勉強したことが大いに役立ちましたね。

――創業家の後を継ぐ経営者の方は、「創業者の意思を大事にしなくては」と、想いが先行しがちな印象があったのですが、竹延さんは現場を地ならしするところからはじめられたわけですね。

もちろん昔からの経営理念も大切だと思いますが、そこに従業員がついてこられていないケースが多いと思うんです。まずは現場の環境を整えるべきだし、時代にマッチしていない理念は、どんどん変えていくべき。お客様が一番大切という想いは、今も昔も変わらないはずなので、時代に合わせた変化は必要だと思いました。

「人手不足」と「技能継承」の課題を解決するため、人材育成に特化した子会社を立ち上げた

――会社に入って、ほかに課題に感じたことはありましたか。

人手不足と、技能の継承問題ですね。人がいないから技術が継承できないし、したことがないから継承の仕方もわからないという状況で。私は、経営の軸は人材育成だと思うんです。人材育成と聞くと若い人の育成を思い浮かべがちだけれど、まずは今働いている職人の目がギラギラ輝いていることが大切だと思います。

そのために職人たちの給料を見直し、仕事のやり方を変えました。その結果、やる気のある職人はさらにやる気を出し、自分の能力を過小評価していた職人もどんどん奮い立つようになり、若い人が自ずと「こんなところで働きたい!」と入ってくるようになったんです。

――すごく良い流れですね。

手ごたえを感じたので、もっと人材育成に特化したいと思い、子会社の株式会社 KMユナイテッドを立ち上げることにしました。

――KMユナイテッドではどのように人材を育成しているのですか。

竹延には、素晴らしいベテラン職人がたくさんいるわけですが、年齢を重ねるにつれて体力的にもやれることが限られていき、「周りから頼りにされなくなった」と目の輝きが失われていたんです。いわゆる高齢化問題があったんですね。

通常、定年後の再雇用というと同じポジションのまま雇いますが、KMユナイテッドでは、職人を「未経験者をゼロから指導するトレーナー」として正社員で再雇用します。どんどん成長していく若手の姿を見て、ベテランたちの目の輝きも戻ってきました。あまりに楽しいから、みんな80歳くらいまで働くんですよ。

――そんなに!

そんなにです(笑)。あとは新人側にもグレードをつけて、着実にスキルアップする仕組みを作りました。この業界って、「せっかくこの世界に入ってきたんだから、先輩の背中を見て覚えろ!何でもやってみろ!」と言いがちなんですが、それは違うと思うんです。ちゃんと力をつけようと思うと、任せる仕事にあえて制限をかけて、一つずつできる仕事を増やしていくほうががより成長を実感できますし、効率的だと思うんです。

――マクドナルドやパイロットさんと同じですね。できる仕事内容に合わせて、名札にシールが貼られたり、制服が変わったりする。

うちでは、できる仕事が増えると、真っ白いヘルメットに線を一本ずつ書き足します。自分の成長が可視化されるので、みんな線を増やそうと、がんばっていますよ。ありがたいことにKMユナイテッドの取り組みは評判となり、「ここで働きたい」と言ってくれる方が後を絶ちません。「人を活かし、技に生きる」という経営理念が体現できているなと感じます。

夢をもってこの業界に入ってくる人々のために、仕事に集中できる環境を作ることが自分の使命

――お話を伺っていると、竹延さんは働きやすい職場環境づくりに相当力を入れられていますね。

国籍や性別関係なく、誰でも入ってこられる環境を作らなければというのは、ずっと考えています。この業界は人手不足だと叫ばれて久しいですが、街を見渡すと多くの人が歩いているわけじゃないですか。こんなにたくさん人がいるのに、この業界に人が入ってこないのは、働きづらい環境に問題があるのだろうと思うんです。

外国の方や女性を受け入れることをアピールする企業もありますけど、労働環境を改善しないまま採用するから、結局みんな辞めてしまう。やりがいをもち、情熱をもって働ける環境じゃないと、どんな人も続かないんです。ここで働くことが楽しい、自分が成長することが楽しい。そう思える環境を作ることが、私の使命だと思っています。

――今後は、どのようなことをやっていきたいですか。

業界の発展のために、現場監督が現場仕事に専念できる環境を作りたいです。そのために、書類業務を代行する「建設アシスト」というサービスをKMユナイテッド内に新しく立ち上げました。現場監督って、仕事の半分以上が書類業務だといわれているんですね。そこをウチに任せてもらうことで、現場監督は現場に集中できるし、残業の多さや休日の少なさによる離職も食い止められるだろうと考えました。

――新事業をはじめるモチベーションは、どこからきているのでしょうか。

高校三年生になる私の息子ですかね。彼は幼少期から、私の会社を継いで社長になりたいという夢があったのですが、ちょっと人付き合いが苦手で、その夢を諦めざるを得なかった。

だけど今、彼は数学者になるという別の大きな夢を抱いているんです。親として、その夢を叶えるサポートしたいと考えた時に、彼が研究に専念できる環境を作ってあげたかった。研究者も現場監督と同じで、書類業務に時間を取られがちじゃないですか。それでは海外の研究者と張り合うことができない。書類業務はこちらで担うシステムを作りますから、君は研究だけで勝負しなさいと。

――そういう経緯もあったのですね。

私は、2022年で株式会社 竹延の社長を退任し、KMユナイテッドの業務に専念します。息子が大学受験を控えており、家族をサポートしたいという気持ちもあるのですが、それ以上に「建築のエンジニアになりたい」とか「一人前の職人になりたい」と、夢を抱いてこの業界に入ってきた人たちが、自分の夢にまい進できる環境を作り続けたいと思ったんです。そのことが、今後の業界の発展に繋がると信じています。

株式会社竹延/株式会社KMユナイテッド

1950年に設立。当初から建築塗装の職人集団として、ノウハウを蓄積してきた。1999年には内外塗装工事やリニューアル工事などにも事業を多角展開し「株式会社 竹延」に社名を変更。70年にわたり、住宅から高層ビルまで建築業界のさまざまな現場を支えてきた。人材の採用と育成に苦労する建築業界で、「人と向き合って職人を育てたい、可能性(K)を未来(M)につなげよう」という思いからKMユナイテッドを設立。その取り組みは業界内外から広く注目を集めている。

参考:https://www.takenobe.co.jp

竹延幸雄氏

1973年、広島県に生まれる。大学を卒業後、広告会社での営業を経て、2003年に妻の実家である塗装会社の竹延に入社。業界の常識を改革し、ノウハウを蓄積するなどして組織力を高める。またITを駆使して女性の活用や人材育成に注力し、厚生労働大臣表彰受賞の他、多方面から受賞をし、高い評価を受けている。

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執筆プロフィール
BUDDY+編集部
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