企業リスク対策
地震への備え、見直しできていますか? 中小企業がまず確認したい「3日分」の防災備蓄
- 更新日:2026/09/01
- 投稿日:2026/09/01
「非常食や水は置いているものの、本当にこの量で足りるのかわからない」「数年前に備蓄したまま、一度も見直していない」。そんな企業も多いのではないでしょうか。 大規模な地震が発生すると、公共交通機関や物流が止まり、従業員がすぐに帰宅できない可能性があります。そこで考えておきたいのが、一定期間を社内で過ごすことを想定した防災備蓄です。 ただし、防災備蓄は水や非常食を購入すれば終わりではありません。「何人分必要か」「何を備えるか」「どこに置くか」「どう管理するか」まで考えて、初めて実際に使える備えになります。
- この記事でわかること
企業の防災備蓄は「3日分」がひとつの目安
大規模な地震が発生した直後、鉄道などの公共交通機関が停止している状態で多くの人が一斉に帰宅を始めると、道路の混雑や群集事故が発生したり、救命・救助活動の妨げになったりする可能性があります。
そのため内閣府のガイドラインでは、災害発生から72時間(3日間)は人命救助に重要な期間であることから、帰宅困難者は原則として3日間、安全な場所に待機するという考え方が示されています。企業についても、施設や周辺の安全を確認したうえで、従業員等が一定期間事業所内にとどまれるよう、平時から備えておくことが重要です。こうした3日間の待機を想定し、企業の防災備蓄も「3日分」がひとつの目安とされています。
| 項目 | 1人あたり3日分の目安 |
| 水 | 9リットル(3リットル/日×3日間) |
| 主食 | 9食(3食/日×3日間) |
| 毛布 | 1枚 |
| その他 | 簡易トイレ、衛生用品、懐中電灯、乾電池、携帯ラジオ、救急用品など |
出典:内閣府「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(令和8年1月)をもとに作成。
従業員30人なら、水だけでも270リットル
これだけ見ると、備蓄すべき量はそれほど多く感じないかもしれません。しかし、従業員30人の事業所で計算すると、水だけで270リットル、主食270食、毛布30枚がひとつの目安になります。また、外部の帰宅困難者となる来客者等のために、例えば10%程度を余分に備蓄する考え方も示されています。30人分に10%を加えて計算すると、水は297リットルになります。ここに簡易トイレ、衛生用品、懐中電灯、乾電池などを加えると、実際の備蓄量は想像以上になることもあります。
こうして必要量を具体的に考えると、「どこに保管するのか」「簡易トイレはいくつあれば足りるのか」「停電が続いた場合の電源はどうするのか」「複数の営業所にはどう配備するのか」といった、新たな課題も見えてきます。防災備蓄は、水や食料の必要量を計算するだけでは決められないのです。
備蓄を見直すなら何から? まず確認したい6つのこと
備蓄品をそろえたり、現在の備蓄を見直したりする際は、まず自社の状況を整理してみましょう。
| 確認項目 | ポイント |
| ① 拠点ごとの対象人数 | 拠点ごとに何人分の備蓄が必要かを整理し、雇用形態を問わず対象人数を明確にします。 |
| ② 来客者数 | 店舗や事務所などの来客数も想定しましょう。 |
| ③ 停電・断水の想定 | トイレ、照明、電源など、停電・断水時に必要となる備品や数量を検討しましょう。 |
| ④ 地域の災害リスク・防災情報 | 地震、津波、液状化、土砂災害など、地域によって優先して備えるべきリスクは異なります。拠点所在地の災害リスクや被害想定を確認し、地域特性に応じた備えを進めましょう。 |
| ⑤ 備蓄品の保管場所・方法 | 数量だけでなく、必要な時に取り出せるか、特定の場所に集中しすぎていないか、各拠点で必要な時に利用できるかまで考えておく必要があります。必要に応じて、保管場所の分散や一部の個別配備も検討するとよいでしょう。 |
| ⑥ 点検・入れ替えルール | 点検する時期と担当者を決め、水・食料の期限や電池類の状態を定期的に確認しましょう。 |
特に大切なのは、「全社で何人いるか」だけではなく、「どの拠点に何人いるか」「その拠点ではどのような災害が想定されているか」まで考えることです。
たとえば、都市部のオフィスでは、公共交通機関の停止によって多くの従業員が帰宅できなくなる可能性があります。一方、工場や倉庫では、停電時の照明や安全用品などの優先度が高くなる場合があります。津波リスクがある地域では施設内待機ではなく避難行動の確認がより重要ですし、山間部では土砂災害への備えが必要な場合もあります。洪水などによる浸水が想定される場所では、備蓄品を低い場所だけに保管すると、いざというときに使用できなくなる可能性があります。地域ごとのリスクを把握し、備蓄品の種類や保管場所に反映することが大切です。
そこで確認しておきたいのが、国や自治体が公開しているハザードマップや各自治体の防災情報です。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、住所から洪水、土砂災害、高潮、津波などの災害リスクを確認できます。また、市町村が公開するハザードマップへのリンクもまとめられています。内閣府の「各自治体防災情報」では、都道府県ごとの防災情報ページを確認できます。自治体によっては避難所情報なども掲載されています。
備蓄品を選ぶ際には、自社拠点のハザードマップや防災情報を確認してみましょう。「浸水の可能性があるなら保管場所を見直す」「津波リスクがあるなら避難行動を優先して考える」など、地域のリスクを備蓄品の種類や保管方法に反映させることがポイントです。
会社だけでなく、経営者・従業員の自宅の備えも確認を
ここまでは会社での備蓄について見てきましたが、地震が発生するのは勤務中とは限りません。夜間や休日など、自宅にいるときに地震が発生する可能性もあります。その場合は、まず自分や家族の安全を確保することが重要です。そのため、企業の防災を考えるうえでも、従業員一人ひとりが自宅で必要な備えをしておくことは大切です。水や食料、簡易トイレ、常備薬などの備蓄に加え、家族との連絡方法や避難先についても確認しておきましょう。また、家庭で必要な備蓄は一律ではありません。家族の人数や年齢、住まいの状況、在宅避難が可能かどうかなどによって、必要なものや量は変わります。
会社の備蓄を見直す機会に、経営者自身の家庭での備えを確認するとともに、従業員にも自宅の防災について考えてもらうきっかけをつくってみてはいかがでしょうか。
備蓄品は「買って終わり」にせず、自社に合った形で整える
会社の防災備蓄も、一度そろえれば終わりではありません。必要な備蓄品を購入しても、いざというときに使えなければ十分な備えとはいえません。たとえば、「数年前に購入した非常食の期限が切れていた」「担当者が変わり、備蓄場所がわからなくなった」「倉庫の奥にあり、必要なときに取り出せない」「複数拠点のうち、本社にしか備蓄がなかった」といった状態は避けたいところです。そのため、防災備蓄は単に物を購入するのではなく、自社の拠点環境や事業継続の方針に合った形で整えることが重要です。拠点ごとの人数や立地、想定される待機日数をふまえながら、必要な備蓄品を無理なく管理できる方法で検討していきましょう。
防災備蓄は、「対象人数の確認 → 必要量の整理 → 購入 → 保管 → 定期点検・入れ替え」までをひとつの流れとして考えることが大切です。「毎年、防災の日の前後に確認する」など、点検する時期と担当者をあらかじめ決めておくと、備蓄が形骸化しにくくなります。
防災備蓄で大切なのは、多くの商品を購入することではありません。自社に必要なものを、必要な量だけ、必要な場所に備え、いざというときに使える状態にしておくことです。
「最後に備蓄品を点検した時期がわからない」「拠点ごとの人数で必要量を計算したことがない」「簡易トイレや電源まで十分に検討できていない」という企業さまは、これを機に一度、備蓄を見直してみてはいかがでしょうか。
参考・出典
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