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インタビュー

地方で永続する企業であるための、時代の流れを読んだ事業転換

株式会社高山 代表取締役社長 高山 智壮

  • 更新日:2022/12/28
  • 投稿日:2022/12/28

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事業承継を機に、文房具店からDX支援企業へと大きく舵を切った企業があります。宮城県塩竈市にある「株式会社高山」です。事業転換前後も、会社の理念は「お客様満足 社員幸福 会社繁栄を通じ、社会に貢献する」。商材が変わってもお客様に伴走する姿勢を崩さず、75年以上地域に根付いています。 2022年1月に先代のお父様から事業承継し、代表取締役社長に就任した高山智壮さん。大学進学を機に上京して銀行に就職し、将来的にはベンチャーキャピタリストになるという夢を抱いていました。 また、幼少期からお父様に厳しく育てられ、折り合いが悪かったことから、家業を継ぐつもりもありませんでした。しかしそんな高山さんの人生を一変させる出来事が起こります。2011年3月11日に発生した東日本大震災です。地元の塩竃も甚大な被害を受け、ボランティア活動に参加するため帰省していた高山さんに、お母様が一本のビデオを見せます。 それは、高山の創業者である祖父の高山克自氏が、亡くなる前に撮影したものでした。呼吸器をつけた克自氏が、生まれたばかりの高山さんを抱きかかえ「必ず智壮にこの会社を引き継げ」と言っている様子が記録されていました。これを見た高山さんは、全身に稲妻が駆け抜けるほど衝撃を受けたといいます。「自分が会社を継ぐことで、何か地元に貢献できるのではないか」。当時25歳だった高山さんが、経営者としての使命を意識するきっかけとなりました。 東京に戻り「グロービス経営大学院」で経営論を学び、2017年ついに高山に入社します。 「会社を永続させる」という意欲をもって入社したものの、文具の販売事業は縮小傾向にあり、当時の事業モデルを続けていても、会社が長くもたないことは明らかでした。大いに悩んだ高山さんが状況を打破するために出した答えは、新規事業の創造と既存事業の変革でした。一体どのような行動を起こしたのでしょうか。

この記事でわかること
  1. 新規事業での挫折体験から得た、目的経営の大切さ
  2. 内定期間中の学生を入社後の即戦力となるように育て上げる
  3. 事業価値や事業定義を見直すことに地方企業が生き残るためのカギがある

新規事業での挫折体験から得た、目的経営の大切さ

――高山に入社後、新規事業としてサイバーセキュリティ事業を立ち上げたそうですね。

銀行員の時、インターネットバンキング事業に注力しており、サイバーセキュリティの重要性を強く感じていました。しかし宮城県には、サイバーセキュリティ専門の会社がありませんでした。そこを高山がやれば、地元の中小企業様のお役に立てるのではと思ったのがきっかけです。その後、サイバーセキュリティと親和性の高いDX商材も扱うようになりました。

――事業転換することに対し、お父様は納得されたのですか。

新規事業を立ち上げなくちゃいけないとは、父も思っていたんです。売上の減少で、非常に厳しい状況でしたから。とはいえ、まったく新しい領域に踏み出すわけですから「うちにサイバーセキュリティなんてできるのか?」「儲かるのか?」と毎日のように言われましたね。けれども結果を出すしかありませんし、とにかく勉強し、がむしゃらに働きました。

――新規事業を立ち上げるにあたり、苦労したことや失敗したことはありますか。

事業自体は少しずつ軌道に乗っていったのですが、私の「なんとかしなければ」という危機感が空回りして、従業員たちの気持ちを尊重できていませんでした。「どうして言うとおりにしないの?」「このとおりにすれば成果が上がるんだから、このとおりやって!」など、責めることばかりして…。当時、父とも常に社内で言い争いしているような状況で、従業員たちはとても苦しかったと思います。その後も、社内を上手くまとめられないことが重なり、僕自身が体を壊して入院してしまって。ところが入院期間中、従業員が誰一人として見舞いに来てくれなかったんですね。自分としては邁進してきたつもりだったけれど、周りを見ると誰もついてきていない。愕然としました。もう会社を辞めようかなとも思いました。

――そうだったのですね。

だけどその時に、「自分は何のために事業承継するのだろうか。」「誰のために、何のために働くのだろうか。」と自問自答しました。

問い続ける中で、気づいたんです。自分は働いて幸せになりたいし、多分従業員も、高山という会社で働いて幸せになりたいと思っている。サイバーセキュリティ事業で成功するのは、あくまで事業としての成功であり、僕が実現したいのは「働く幸せ」なのだと。

――具体的に、何か行動に移したのでしょうか。

私たちが目指すのは「働くを幸せに」なのだということを、メッセージとして社内外に強く打ち出すようにしました。そして「選択理論心理学」を学び、自分の考え方を変えました。それまでは自分に対しても、周りに対しても、できてないことを否定する、批判するといったことばかりしていたのですが、それはもう止めようと。それよりも話を聞いたり受け入れたりして、その人に内在する可能性を引き出してあげようという心構えにシフトして。とても苦しい時期を過ごしましたが、それをきっかけに大切なことに気づくことができました。

内定期間中の学生を入社後の即戦力となるように育て上げる

――地方企業の悩みである人材確保。都市圏と比べてどうしても不利に思います。採用において大切にしていることは、どんなことでしょうか。

高山が何を目指し、どういう価値を社会に提供しているのかをトップがしっかりと伝えることです。ロールモデルの従業員に、なぜ入社したのかと聞くと「代表のメッセージに共感した」「代表が書いたブログを読み、この人と働きたいと思った」と返ってくることが多いんですね。“共感”が、一番の志望動機になるのだと感じています。採用の説明会やイベントにも、私が必ず出席して思いを伝える。それが大事だったと思います。

――求職者に高山を認知してもらう工夫は、何かされていますか。

インターンにとても力を入れています。「MINT」という宮城県内のインターン生を募集するWebサイトで毎年募集をかけているうちに「高山のインターンはとてもいい」という口コミが集まり、多くの応募が来るようになりました。採用の好循環サイクルが作れています。

――採用した後の若手メンバーを伸ばす工夫はありますか。

内定期間中の実践型トレーニングは、高山ならではかもしれません。内定者の希望があれば、内定期間中にテレワークで時給制のアルバイトとして働ける環境を整えています。学生が通常アルバイトをするような飲食店やサービス業などよりも魅力的な時給にしているので、興味を持ってもらえます(笑)。

バディとなる先輩をつけて、高山で働くための知識を少しずつ教えます。そしてそこでインプットしたものを、デジタルコンテンツにどんどんアウトプットしてもらうんです。メルマガのテキストに落とし込んでみたり、LPサイトを作ってみたり、営業資料を作成してもらったり。そうすると、入社前の段階で社会人としての報連相はもちろん、必要な商品知識、ビジネススキル、パソコンスキルが実装されている状態になります。

――それはすごいですね。

インターン採用サイトも、学生が内定期間中に作ったものです。プロが作ったものには少し劣りますが、まったく問題のないクオリティです。学生の目線で作られているからか、学生からも評判はいいです。内定者は、入社する頃には高山の事業説明を完璧にできるようになっているので、取引先の方たちから「なんだ、このスーパー新入社員は!?」と驚かれます(笑)。学生にも、そこを武器にしてほしいですね。

もう一つ、長所伸展とその人の願望を引き出すマネジメントを意識しています。前述したように、その人の内在する可能性を引き出してあげたいので、適性検査のようなものを使って強みを見ることもあります。また、内定期間中にどの事業にやりがいを感じたのかを細かく吸い上げて、内発的動機づけを行うようにしています。

――必ず希望する部署に配属されるのですか?

そうではないです。その人がやりたいこと、できること、やるべきことが重なっている部分が、一番パフォーマンスが高いと思うので、そこを狙って配属先を決めます。実際にそうやって配属された子たちは、モチベーションも高いのでハイパフォーマンスを発揮してくれていますね。

事業価値や事業定義を見直すことに地方企業が生き残るためのカギがある

――地方企業が生き残っていくためには、どういうことが必要だとお考えですか。

二つあると思います。一つは事業価値や事業定義を再定義することです。これまでの高山は「文房具・事務機器販売」というブランディング定義だったのですが、1年前に私が「DXで、共に働くを幸せにする企業」と定義し直しました。オフィス自体も「文具を売る場所ではなく、企業が生まれ変われることを体感できる場所」と定義を変えて、高山のオフィスでDX体験ツアーができるようにしました。

――非常におもしろい取り組みですよね。

東北ってまだまだDXが浸透していなくて、商材を提案しに行っても「売り込みに来られた」と断られることが多かったんですね。そこで逆転の発想で、売り込むのではなく、顧客に「高山さんの働き方は、なんでこんなに変わったのだろう?見に行きたいな」と思ってもらえる動線を作り、DXを取り入れた働き方を実際に見てもらえるようにしようと。「うちの会社も、こんな働き方をしたい」という、新たなCX(顧客体験)を自分たちで創造したのです。たとえ最先端の技術がなくても、地方の会社であっても、このように定義を変えることでイノベーションを起こせると僕は思っています。

――二つ目は何でしょうか?

多様な人材です。当社のメンバーはそれぞれがプロフェッショナルで、最初は意見がまったく合わないんですけど(笑)。でもそれが組み合わさるから、おもしろいものができる。これからの時代は独自性が大切だと考えているので、ユニークな発想をもったメンバーたちが「こうすればもっと、お客様に喜んでもらえるんじゃないか」と高山で実証実験できる環境を提供し続けたい。そして実証済みのノウハウをお客様に届けるというビジネスモデルを、今以上に確立していきたいです。

――最後に、今後の目標を教えてください。

「DXで、共に働くを幸せに」、これに尽きます。これからの時代、売り上げの成長だけが真の幸せだとは思っていません。ワークライフバランスややりがい・生きがいをもって働けるということの方が大切だと考えています。一人ひとりが働く幸せを感じられていると、家庭に帰ってからも幸せだと思うんですよ。今は、何も対策を講じなければ、働き方をはじめ、さまざまな局面が右肩下がりになっていく時代です。だからこそDXを活用して圧倒的に生産性を高め、みんなが幸せに働ける働き方や、それを実現できる企業様を一社でも多くつくっていくことが僕たちの使命だと感じています。家族、従業員、お客様、パートナー、そしてご縁ある方々が、心物両面で豊かな暮らしを送れる社会づくりに貢献してまいります。

株式会社高山

戦後の1946年、学校や市役所に文房具や事務用品を届ける商店として創業。商品、商材は時代とともに柔軟に変えているものの、一貫して掲げているのは「働く=傍(はた=他者)を楽にする」こと。クライアントが働きがい・生きがいを感じられる環境づくりに貢献し続けている。創業76年を迎えた2022年1月11日に事業承継を行い、三代目の高山智壮が代表取締役社長に就任。それと同時に「共に、働くを幸せに」をスローガンに、企業のDX・働き方改革の挑戦を支援する企業へと変革。自社でもDXを積極的に活用した働き方改革を行い、実体験に裏打ちされた経験・ノウハウを中小企業の問題解決に役立てている。

高山 智壮氏

中央大学卒業後、大手銀行に入社。個人営業を担当するも、ノルマに対するプレッシャーから心身のバランスを崩し「自分には、何ができるのだろう」と自問自答する日々を送るなか、東日本大震災が発生。すっかり様子が変わってしまった地元を見てショックを受けるも、ボランティア活動をするために帰省。その際、実家で母親に見せられた一本のビデオに大きな衝撃を受け、「自分ができること=家業を継いで地元に貢献すること」だと決意を固める。東京に戻り「グロービス経営大学院大学」で経営学を学び、MBAを取得。2017年高山に入社、2022年1月代表取締役社長に就任。

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執筆プロフィール
BUDDY+編集部
  中小企業の経営者の皆さまに向けて、経営課題解決につながるお役立ち情報をお届けします。

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