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【2023年4月】中小企業も50%以上に!時間外・休日労働の割増賃金を36協定とまとめて解説

  • 更新日:2022/10/11
  • 投稿日:2022/10/11

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2019年4月に施行された「働き方改革関連法」によって、中小企業に設けられていた「法定割増賃金率の引き上げ」の猶予期間が2023年4月に終了することが決定し、月60時間を超える時間外労働に対しては割増賃金率を50%以上とすることが義務づけられます。また、同じく2019年4月に改正された労働基準法により、時間外労働に対して限度時間や違反の際の罰則などが定められ、上限を超える時間外・休日労働をさせるためには36協定の締結が必要になりました。 これから割増賃金率の引き上げに対応する中小企業は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。 本記事では、時間外・休日労働の割増賃金の計算方法や「時間外・休日労働に関する協定」、通称36協定を見直す際のポイントについて解説します。

この記事でわかること
  1. 【2023年4月】法定割増賃金率の猶予措置が終了します
  2. 36協定の基本と注意点
  3. 労務相談は専門家へ

【2023年4月】法定割増賃金率の猶予措置が終了します

2010年4月に施行された改正労働基準法では、大企業に対し、月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金を支払うことが定められました。このとき、中小企業については猶予期間が設けられ、猶予中は従来どおりの法定割増賃金率(25%)にもとづいた割増賃金を支払えばよいこととなっていました。しかし、2019年4月の法改正によって法定割増賃金率引き上げの猶予期間の終了が決定しています。2023年4月からは、中小企業においても50%以上の割増賃金を支払わなければなりません

法定割増賃金率の引き上げに正しく対応するために、あらためて割増賃金の計算方法について見ていきましょう。

割増賃金の計算方法

割増賃金の額は、「1時間あたりの賃金×割増率×時間数」で算出できます。割増賃金を計算するには、その基礎となる「1時間あたりの賃金」を正しく計算する必要があります。月給制の場合も、月給を1時間あたりの賃金に換算してから計算しましょう。

<割増賃金の計算式>

・時給制の場合 時給×割増率×時間数

・月給制の場合 (月給÷月平均所定労働時間)×割増率×時間数

月給制の場合、月給には基本給だけでなく諸手当も含まれます。ただし、すべての手当が含まれるわけではありません。算定基礎となる賃金にはどこまでが含まれるのか、次項から説明します。

割増賃金の算定基礎となる賃金

割増賃金の算定の基礎に含むべき賃金は、「通常の労働時間または労働日の賃金」です。そのため、危険な作業をした日にだけ支払われる「危険作業手当」などは含まれません。ただし、時間外に危険な作業をする場合は危険作業手当も割増賃金の算定基礎に含める必要があります。

割増賃金の算定基礎から除外できる賃金

割増賃金の算定基礎から除外できるものは、次のように法令で定められています。

<割増賃金の算定基礎から除外できる賃金>

⦁ 家族手当

⦁ 通勤手当

⦁ 別居手当(単身赴任手当)

⦁ 子女教育手当

⦁ 住宅手当

⦁ 臨時に支払われた賃金

⦁ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

除外できる賃金はこの7つのみで、これらに該当しない賃金はすべて算入しなければなりません。ただし、家族手当については「扶養家族数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」のみを除外できます。扶養家族の人数に関係なく、一律に支給している場合は割増賃金の算定基礎に含めます。また、「物価手当」、「生活手当」などの名称であっても、扶養家族数を基礎として算出している部分がある場合、その部分は家族手当とみなして割増賃金の基礎から除外できます。住宅手当については、賃貸で2万円、持ち家は1万円など、住宅の形態ごとに一律定額で支給しているものは除外できません。そのほか、よくある手当と除外の可否については次のとおりです。

<よくある手当と割増賃金の算定基礎除外の可否>

・通勤手当 通勤距離または通勤に要した実費に応じて算定される手当のみ除外可能

・精皆勤手当 3ヶ月の出勤成績によって支給される精勤手当は除外可能

・営業手当 基本的には除外不可。ただし、営業手当という名称の固定残業代の場合は除外可能

・在宅勤務手当 毎月定額の場合は除外不可

36協定の基本と注意点

2019年4月に施行された改正労働基準法により、時間外労働・休日労働が発生する企業では「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、労働基準監督署に届け出ることが義務づけられました。また、労働基準法では法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働かせてはならない、法定休日(原則週1日)を与えなければならないと定められています。とはいえ、業務の都合により法定労働時間を超えて、または法定休日に労働させる必要が出てくることもあります。

改正労働基準法に対応すべく、すでに36協定を締結している企業もあるでしょう。しかし、2023年4月からの法定割増賃金率の引き上げに対応しなければならない企業は、36協定に記載した割増賃金率を変更する必要があります。この機会に、締結された36協定の内容に法律違反などがないか確認し、問題があれば見直しを図りましょう。

36協定で気をつけたいポイントについては、次項から説明します。

過半数代表者の選出について

労使協定は、使用者と労働者代表の間で締結します。事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その組合の代表者が労働者代表となります。労働組合がない、あっても過半数に満たない場合は、労働者の過半数を代表する者を選出します。

2021年4月以降から、36協定の届出の様式が変更され労働者代表の選出方法について確認するチェックボックスが2つ増えています。これは「労働者が過半数を代表するものであること」、「管理監督者や使用者の意向により選出された者でないこと」を確認するためです。次の2点に注意し、正しい代表者を選出しましょう。

<労働者代表を選出する際の注意点>

1. 管理監督者でないこと(部長や工場長など、経営者と一体的な立場にないこと)

2. 投票や挙手など、民主的な手続きで選出されていること

時間外労働の上限と特別条項

36協定で時間外労働を定めるときには、時間外労働の上限と特別条項による上限について理解する必要があります。

<時間外労働および特別条項の労働時間の上限>

・時間外労働の上限 1ヶ月45時間以内、1年360時間以内

・特別条項による上限 1年720時間以内

 かつ、時間外労働と休日労働の合計が1ヶ月100時間未満、2~6ヶ月の平均80時間以内

法律では、時間外労働の上限を「1ヶ月45時間以内、1年360時間以内」と定めています。そのため、この範囲を超えて36協定を締結することはできません。また、36協定にて法律よりも低い上限を設けたときには、法律よりも36協定が優先されます。つまり、36協定で「月10時間まで」と定めた場合、労働時間が月10時間を超えると法律違反となります。

特別条項による上限とは、臨時的な特別の事情がある場合、年6回(6ヶ月)を限度として原則的な上限を超えての時間外・休日労働が可能になるというものです。特別条項を設ける場合、「臨時特別の場合の具体的な内容」、「延長できる時間外・休日労働の時間数」、「回数」、「割増賃金の率」、「延長手続き」、「健康福祉確保措置」を協定に盛り込む必要があります。

特別条項を定めた場合でも、前述した上限を超えると法律違反となり、罰則が科されるおそれがあります。企業は、36協定に定めた内容どおりに従業員の労働時間を管理しなければなりません。

労務相談は専門家へ

割増賃金の計算・支給や36協定の締結・見直しは必要なものとはいえ、時間も人も足りずに対応が難しい企業もあるでしょう。しかし、時間外労働を正しく把握せず長時間労働をそのままにしていては、割増賃金によるコスト増に加え労災リスクの高まりが懸念されます。法律への対応が必要になるこの機会に、時間外労働や36協定について見直しを行い、労働環境の改善を図りましょう。

労働基準法や割増賃金についてより詳しく知りたい、法律に対応したい場合は、厚生労働省が各自治体に設置する「総合労働相談コーナー」や所属する商工会議所・中小企業団体中央会、あるいは民間の社会保険労務士法人に相談する方法もあります。自社のみでの対応が難しい場合は、専門家の力を借りつつ、労働基準法に則った経営に取り組みましょう。

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執筆プロフィール
社会保険労務士法人 伊藤人事労務研究所
「強い人事が組織を強くする」を信念に働き方改革と業務効率化をサポートする業界屈指の社会保険労務士法人。

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