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最低賃金引き上げ。中小企業のリスクと今すぐ始めるべき対策をご紹介
- 更新日:2023/09/12
- 投稿日:2023/09/12
2023年8月18日、厚生労働省は本年度の地域別最低賃金の改定額を公表しました。それによると、改定額の全国加重平均は、昨年度から43円上昇して1,004円となり、昨年度の過去最大31円を上回る引き上げ額となりました。 最低賃金の引き上げは、従業員にとっては喜ばしいことですが、会社にとっては悩ましい問題であり、対応に苦慮している経営者の方も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、最低賃金の引き上げによって、「中小企業にはどのようなリスクが起こり得るのか」、「そのリスクを回避するための対策としてどのようなものがあるか」ということについて、詳しく解説していきます。
1.そもそも最低賃金とは?
最低賃金とは、使用者が労働者に支払うべき賃金の最低額のことを言います。最低賃金法に基づいて国が「最低賃金制度」を定めており、使用者はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされています。
最低賃金については、厚生労働省の特設サイトで詳しく解説されていますので、参考にしてください。
最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と特定の産業を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い水準で定められており、両方の最低賃金が同時に適用される労働者に対しては、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
このように、国の制度として最低賃金が厳格に定められているため、万が一、それに違反した場合には、会社側は大きなリスクを負うことになります。
2.最低賃金に違反した場合のリスク
もしも会社として最低賃金に違反してしまった場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。
たとえば、最低賃金額より低い賃金で労働者と契約したとします。それが、仮に労働者・使用者の双方の合意の上の契約であったとしても、その部分は法律によって無効とされ、最低賃金額で契約したものとみなされます。
また、使用者が労働者に支払っている賃金が最低賃金を下回っている場合には、次のようなリスクがあります。
①差額の支払い義務が生じる
使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。2020年4月1日施行の改正労働基準法で、賃金請求権の消滅時効期間が2年から5年(当分の間は3年)に変更されたことから、最大で過去3年分の差額を支払う義務が生じる可能性があり、注意が必要です。
②罰金が課せられる
労働基準監督署から是正勧告を受けても差額を支払わないなど、悪質であるとみなされた場合には、罰則として罰金が課せられます。地域別最低賃金に違反した場合には50万円以下の罰金、特定(産業別)最低賃金に違反した場合には30万円以下の罰金に処されることが、労働基準法で定められています。
③会社の信用を落とす
企業経営においてコンプライアンス重視が叫ばれている昨今、最低賃金に違反していることが発覚すれば、会社の信用は大きく損なわれることになります。場合によっては、差額や罰金の支払い以上に深刻なダメージを会社に与えることになり、その後の人材採用や取引先との関係にも悪影響が及ぶことは必至です。
このように、最低賃金制度に違反した場合には会社として少なからぬリスクを負うことになるため、改定に関する情報はこまめにチェックし、必ず守るようにしましょう。
なお、2023年10月から適用される最低賃金については、以下のサイトから確認することができます。
3.最低賃金引き上げに対して活用できる助成金
最低賃金の引き上げは、従業員にとっては所得の増加につながりますが、会社にとっては人件費の増加につながり、少なからぬ負担となってきます。では、会社として今すぐ始められる対策にはどのようなものがあるでしょうか。
ここでは、最低賃金の引き上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業として、厚生労働省が実施している助成金を2つご紹介します。
①業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資等にかかった費用の一部について助成を受けられます。
対象となる主な要件等は以下のとおりです。
・中小企業・小規模事業者であること
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること
・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
以上の要件を満たした事業者は、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を立て、事業場ごとに申請することができます。
助成金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に下記の助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、いずれか安い方の金額となります。
より詳細な内容についてはこちらの申請マニュアルをご確認ください。
※厚生労働省HP『業務改善助成金について』をもとに東京海上日動にて作成
また、10人以上の区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。特例事業者とは、以下のいずれに該当する事業者を特例事業者とします。
※厚生労働省HP「業務改善助成金について」をもとに東京海上日動にて作成
②働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
働き方改革推進支援助成金の団体推進コースは、業種別の事業主団体が、業界全体として傘下企業の生産性向上と労働者の賃金引上げを目的とした、販路拡大のための市場調査や新たなビジネスモデル開発などの取り組みに対して助成を行う制度です。
制度の概要を下表にまとめました。より詳しい内容は、こちらのリーフレットおよび申請マニュアルをご参照ください。
※厚生労働省HP「働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)」をもとに東京海上日動にて作成
今回ご紹介した2つの助成金については、こちらの冊子で実際の活用事例を見ることができます。業務の効率化や働き方の見直しなどを実施して生産性向上を実現し、賃金の引き上げを行った事例や、取り組み後の変化、助成活用のポイントなどが分かりやすくまとめられておりますので、助成金の申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
4.補助金・助成金の活用にあたって
ここまで、最低賃金の引き上げに伴う中小企業のリスクと、今すぐ始めるべき対策についてご紹介してきました。
デフレ脱却を目指す政府の方針もあり、最低賃金の引き上げは今後も続いていくことが予測されます。加えて、コロナ禍による経営難や原材料費の高騰など、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。経営者として、この苦境を乗り越えていくためにも、国が実施する支援策をうまく活用し、経営に役立ててみてはいかがでしょうか。
東京海上日動の助成金・補助金診断システムでは、Web上で簡単な質問に回答すると、今回ご紹介した業務改善助成金以外にも、受給できる可能性の高い助成金・補助金を無料で診断することができます。
また、無料の個別相談も承っているほか、申請手続きの代行を依頼したい場合には有料の支援もご利用いただくことが可能ですので、まずは以下のバナーからお気軽にご活用ください。
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