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労働法改正に対応できていますか?就業規則見直しの7つのポイント
- 更新日:2022/12/22
- 投稿日:2022/12/22
企業が遵守すべき労働関連の法律は、他の法律と比較して改正が多く、ほぼ毎年行われています。働き方が大きく変わりつつある昨今、企業は定期的に就業規則を見直す必要があります。しかし、その見直しになかなか着手できない企業も多いのではないでしょうか。本記事では、就業規則を見直すことの重要性とあわせ、とくに見直しが必要な規則と変更の際のポイントをご紹介します。
- この記事でわかること
就業規則の見直しはなぜ必要?
就業規則は、従業員の労働時間や賃金など、労働条件や待遇の基準を定めた会社のルールブックともいえるものです。
労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を雇用している企業には、就業規則の作成および労働基準監督署への届け出が義務付けられています。しかし、就業規則の内容を定期的に見直し、法や現状に即した内容に適宜変更している企業はそれほど多くないようです。
企業の運営において重要な位置にある就業規則は、定期的な見直しが必要です。その理由として、労働関連の法律における改正の多さが挙げられます。労働関連の法律には、労働契約法や育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法などがあります。企業は、これらの法律のうちどの法律が改正されるのか、どのような点が変更されているのか、それによって経営にどのような影響があるのかを確認し対策を講じる必要があります。
自社の就業規則が改正法の内容にそぐわないようであれば、経営リスクを回避するためにも見直しを行いましょう。
就業規則を見直す際にチェックしておきたい7つのポイント
就業規則の見直しを行うといっても、「どこから手を付けてよいのかわからない」という企業も多いでしょう。ここからは、見直す際にチェックしておきたい7つのポイントをご紹介します。
1.無期転換ルールへの対応
就業規則の適用範囲が「無期転換ルール」に対応しているかを確認しましょう。無期転換ルールとは、同一企業で有期労働契約が更新され、通算5年を超えたときには、従業員からの申し込みによって無期労働契約に転換されるルールのことです。
無期転換ルールは、2013年4月1日に施行された改正労働契約法によって定められたものです。従来、就業規則はフルタイムかつ無期雇用の正社員向けに策定されていました。そのため、有期雇用や非正規の契約社員、パート・アルバイト従業員など正社員以外の従業員向けの就業規則を定めていない企業も多くありました。
無期転換ルールによって無期雇用となった契約社員などが正社員にならなかった場合、正社員以外の従業員向けの就業規則を定めていなければ正社員と同じ労働条件を与えることになってしまいます。
無期転換後に契約社員などを正社員としない場合には、無期転換後に適用する就業規則を用意することをおすすめします。策定するうえでは、厚生労働省が提供するモデル就業規則を参考にしましょう。
厚生労働省「多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説」
2.ハラスメントに関する規定
2020年6月(中小企業は2022年4月)、企業にはパワーハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられました。義務化に対応するため、また各種ハラスメントによる経営リスクを避けるためにも、就業規則にハラスメントを禁止する規定を設けましょう。
具体的には、パワハラなどハラスメント行為をしてはならないこと、行為者は懲戒処分の対象になることがある旨などを規定します。ハラスメントへの意識が高まっている中でも、就業規則にハラスメント防止に関する規定を盛り込んでいない企業は少なくありません。
また、パワーハラスメント防止措置および各種ハラスメントについて、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
2022年4月から中小企業も対象!パワハラ防止措置の義務化に企業はどう対応すべき?
3.長時間労働に関する規定
2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働の上限規制が強化されました。この上限規制には罰則が設けられており、規定を守らなかった場合には使用者に対して罰金などが科せられることもあります。
時間外労働について従業員の自主性に任せている企業では、給与計算の際に初めて長時間残業をしている従業員がいることに気づくケースもあるでしょう。
長時間労働をさせないようにするには、経営層の発信や部下の長時間労働抑制についての管理職教育の実施、「ノー残業ウィーク」などの導入、一定の時間になった際のPCの強制シャットダウンなどで周知・啓発することが重要です。
加えて、厚生労働省が発行する「モデル就業規則」にて絶対的必要記載事項とされた始業・終業の時刻など労働時間に関する事項や長時間労働者に対する面接指導に加え、勤務間インターバル制度の導入などについて就業規則に盛り込む必要があります。
厚生労働省「モデル就業規則」
4.同一労働同一賃金への対応
2020年4月(中小企業は2021年4月)から、正社員と非正規社員の間で、不合理な待遇の格差を禁止する法律が強化されました。
「同一労働同一賃金」と呼ばれるこの問題では、説明のつかない格差を禁止しています。改正法では、賃金だけでなく教育訓練を含むあらゆる労働条件において、不合理な格差を禁じています。
待遇の格差を是正するために、まずは雇用形態と雇用形態ごとの格差の有無を確認しましょう。もし格差があった場合には、待遇差が説明のつくものかあらためて確認し、格差の解消に努めます。
就業規則においては、正社員とその他の従業員の就業規則を比較し、格差があれば給与や休暇制度など待遇について見直します。
格差の有無を確認するうえでは、厚生労働省の「同一労働同一賃金特集ページ」を参考にしましょう。
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
5.テレワークに関する規定
新型コロナウイルスの蔓延防止を目的に、多くの企業がテレワークを導入しています。その一方で、一時的な対応としてテレワークに切り替えていたことから、就業規則にテレワークに関する規定を盛り込んでいない企業も多くあるようです。
BCP(事業継続計画)の観点からも、テレワークに関する就業規則を定めることは重要です。テレワークに関する就業規則をつくる場合には、就業ルール、通勤手当、通信費や水道光熱費などの取り扱いについて規定しましょう。
具体的な内容については、厚生労働省が提供する「テレワークモデル就業規則」を参考にするとよいでしょう。
厚生労働省「テレワークモデル就業規則」
6.育児休業の分割取得への対応
育児・介護休業法が改正され、2022年10月より産後パパ育休(出生時育児休業)、育児休業の分割取得が認められています。この制度は複雑なため、就業規則の育児・介護休業規定を全面的に書き直す必要があり、具体的には、育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働などについて規定する必要があります。
あわせて、育児・介護休業の労使協定も見直しましょう。
これら就業規則、労使協定の見直しでは、正社員と非正規社員の間に格差が生じないよう整備する必要があります。
就業規則と労使協定の育児・介護休業規定を見直すうえでは、厚生労働省が提供する規定例を参考にしましょう。
厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
改正育児介護休業法について、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
【2022年4月1日以降段階的に施行】改正育児・介護休業法の7つのポイントをおさらい
7.割増賃金率の引き上げへの対応
2023年4月より、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが中小企業においても義務化されます。月60時間を超える長時間労働が常態化している企業は、割増賃金率の変更について就業規則に盛り込みましょう。具体的には、給与規定における時間外手当の計算方法の箇所を見直します。
割増賃金率の引き上げの対応としては、長時間労働にならないようにする方法もあります。この場合は、前述した長時間労働に関する規定を就業規則に設けるとよいでしょう。
割増賃金に関する規定では、厚生労働省が発行する「モデル就業規則」を参考に、自社に適する就業規則を策定しましょう。
厚生労働省「モデル就業規則」
割増賃金率の引き上げについて、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
【2023年4月】中小企業も50%以上に!時間外・休日労働の割増賃金を36協定とまとめて解説
就業規則の見直しで法律遵守と働きやすい環境づくりを実現
労働関連の法律が改正されるときには、改正内容を確認し就業規則の見直しを検討しましょう。会社のルールブックともいえる就業規則を整えることは、経営リスクの軽減にもつながります。法律を遵守し、かつ働きやすい環境をつくるために、自社の就業規則をあらためて確認することをおすすめします。
就業規則の見直しについて、不明点がある場合や自社のみでの対応が難しい場合には、社会保険労務士や商工会議所に相談してみましょう。また、GLTD(団体長期障害所得補償)にご加入の企業様のみのご利用となりますが、「健康経営支援パッケージサービス」では就業規則診断などの簡易診断を行い、診断結果に基づく社会保険労務士などの専門家の訪問による相談・アドバイスを実施しておりますのであわせてご活用ください。
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